薬剤師である私が、なぜ社会保険労務士事務所を開業したか?
方向性を模索した公務員時代
薬剤師の仕事に調剤以外の可能性を見出せず、市役所に就職。様々な部署を経て医務薬務課へ配属。薬事監視員として病院や薬局の監査を担当し、多くの医療関係者と対話する中で医療現場に魅力を感じた。「地域包括ケアシステム」が注目され始めた頃、在宅医療に特化した薬局に惹かれ、その薬局へ転職を決意した。
薬局勤務で大きな挫折
転職先は急成長中の薬局。入社後すぐに薬局長を任され、忙しい中も会社のチャレンジ精神に感銘を受けた。しかし、優秀な同僚に支えられるも、自身の未熟さを痛感し、人の問題にも悩む。環境の変化に自己の成長が追いつかず、心身共に限界を迎え、退職。「本当に悔しいです。でも、辞めます」上司に涙ながらに告げた日の苦い記憶は、人生における大きな挫折として今も胸に残る。
医療の本質について考え直す
挫折を機に、全国規模の医薬品卸へ再就職。管理薬剤師として勤務する傍ら、医療経営を学び、講演の機会も得て「医療とは何か」を突き詰めた結果、「医療はサービス業である」とのシンプルな結論に至る。
社会保険労務士への挑戦
「医療はサービス業」との考えから、働く「人」の重要性を認識。「医療、介護スタッフが働きやすい職場を作りたい」と社会保険労務士を目指すことを決意した。理系出身で働きながらの法律系国家資格の勉強は困難を極めた。毎朝5時起きでの猛勉強、単身赴任やコロナ禍という孤独な闘いを経て、3年越しの挑戦で合格を掴んだ。
理想の追求
合格後、当初は社内での活躍を考えていたが、大企業で理想を貫く難しさを痛感し、「本当にやるべきことをやるには、起業しかない。」と退職を決意した。今でも正直なところ、「なぜ好き好んで困難な道を選ぶのだろうか」という考えが頭をよぎる。しかし、「医療、介護スタッフの定着する職場作り」は絶対に挑戦を続けなければならない、社会的課題である。医療現場の経験者として、この課題に対し、必ず力になれることがあると私は信じている。