【AI図解で直感的に分かる】2026年調剤報酬改定 調剤ベースアップ評価料の算定要件や手続きについて(3月24日時点)

令和8年3月5日付けで「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」が厚生労働省より発表されました。その中でも、今回は調剤薬局にとっては、はじめてのベースアップ評価料の対応になる、「調剤ベースアップ評価料」についてお伝えします。

本評価料は、単なる一時的な手当の補填ではなく、現場職員の継続的な基本給等の引き上げ(ベースアップ)を構造的に実現する薬局を評価・支援するための極めて重要な制度です。

 透明性の確保: 評価料収入をすべて賃金改善に充当することを義務付け、その実績報告を求めることで、適切な還元が行われる仕組みとなっています。

 処遇改善の確実な遂行: 保険薬局における賃金改善の原資を診療報酬で評価し、他産業に負けない処遇水準の確保を目指します。

 「ベースアップ」への重点投資: 一時金ではなく、基本給や恒常的な手当の引き上げを主眼に置き、中長期的な離職防止・人材確保を支援します。

1. 対象となる保険薬局の要件

(厚生労働省 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和8年3月5日)」を基にAIを用いて筆者作成)

本評価料を算定するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 調剤基本料の届出: 調剤基本料に係る届出を実施している保険薬局が対象です。
  • 法令遵守: 労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等の労働関係法令を遵守していること。
  • 店舗販売業を併設している場合:評価料による収入は、「保険調剤に従事する職員」の賃上げのみに充てること。
    • 店舗販売業を併設し、業務区分が不明瞭な場合は、「全収入に対する保険調剤収入の割合」を用いて対象職員数を案分すること。
    • ※この案分計算は「賃金改善総額」を算出する際の基準となるため、計算過程の記録を必ず残してください。

2. 対象外となる職員の定義

(厚生労働省 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和8年3月5日)」を基にAIを用いて筆者作成)

当該保険薬局に勤務する職員のうち、以下の者は「対象外」となります。

  • 事業主、使用者、開設者、管理薬剤師など
  • 40歳以上の薬剤師
  • 業務委託により勤務する者
  • 他の保険薬局等を主たる勤務先とし、調剤業務等に直接従事していない管理的業務に専従する者(本部職員、エリアマネージャー等)

3. 賃金改善の実施ルールと計算方法

  • 賃金改善実績の基本的な計算方法(差分による判断) 賃金改善の実績は、以下の2つの金額の差分によって判断されます。
    • 「当該評価料を算定した年度に勤務している職員の基本給等総額」
    • 「原則として、令和8年3月時点の給与体系を、当該年度に勤務している職員の賃金に当てはめた場合の基本給等総額」
      • ※これらの総額および賃金改善の実績には、「令和7年度医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」によって交付される補助金による部分は含めないルールとなっています
  • ベースアップ等への充当義務: 評価料によって得られた収入は、対象職員の「基本給」または「決まって毎月支払われる手当(夜勤手当を含む)」の引き上げ(ベースアップ等)、およびそれに伴う賞与や時間外手当等の増加分に全て用いる必要があります。
  • 例外規定: 処方箋受付回数の変動などにより、評価料による収入がベア等の額を上回り、追加のベア等を行うのが困難な場合に限って、賞与などの手当による賃金改善が認められます。ただしこの場合でも、他の賃金項目の水準を下げてはいけません。
  • 実績の計算方法: 賃金改善の実績は、「原則として令和8年3月時点の給与体系を当該年度に勤務している職員の賃金に当てはめた場合の基本給等総額」と、「当該評価料を算定した年度に勤務している職員の基本給等総額」の差分によって判断されます(令和7年度の関連補助金による部分は含めません)。
  • 充当期間の特例: 6月から翌年5月までの1年間に算定した評価料による収入を、当該年の4月から翌年3月の給与改善に充てることが認められています。

4. 届出・報告・周知の義務

(厚生労働省 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取り扱いについて(令和8年3月5日)」を基にAIを用いて筆者作成)

  • 初回の届出: 算定を開始するにあたり、「様式103」を用いた届出が必要です。複数薬局の賃金総額等を通算して届出を行う場合は、報告等に「様式104の別添2」を使用します。
  • 毎年の報告義務(8月): 毎年8月に、地方厚生(支)局長に対して、前年度の実績を評価する「賃金改善実績報告書」と、当年度の状況を報告する「賃金改善中間報告書」を提出する義務があります。
  • 賃金を引き下げる場合の特例: 事業継続のためにやむを得ず対象職員の賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う場合は、「特別事情届出書(様式94)」を作成し、届け出る必要があります。
  • 職員への説明・周知: 賃金改善を実施する方法や就業規則等の内容について、対象職員にしっかりと周知する必要があります。対象職員から照会があった場合は、書面を用いるなどして分かりやすく回答しなければなりません。
  • 書類の保管: 評価料の算定に関わる書類(実績報告書等の根拠資料)は、算定した年度の終了後から3年間保管する義務があります。
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手続き・書類名提出時期・頻度備考・使用様式
算定開始の届出算定開始時様式103を提出
賃金改善実績報告書毎年8月(必須)前年度の実績。
様式104の別添1を使用。
複数薬局の一括届出様式104の別添2を使用。
賃金改善中間報告書毎年8月(必須)当年度の進捗状況を報告。
様式104の別添1を使用。
複数薬局の一括届出様式104の別添2を使用。
特別事情届出書賃金を引き下げる際様式94を使用

「様式94」の提出は、当局にとっては「レッドフラグ(警告)」になります。 評価料を受け取りながら賃金を引き下げる行為は、適時調査(個別指導)等の優先対象となる可能性が高いと予想されます。安易な提出は避け、まずは社労士等の労務管理の専門家へ相談することを推奨します。

まとめ

令和8年新設の「調剤ベースアップ評価料」は、人材定着に直結する重要な制度ですが、運用には厳格なルールが伴います。評価料の全額充当義務や複雑な対象者の按分、毎年の緻密な実績報告など、実務担当者の負担とコンプライアンスリスクは甚大です。

万が一の運用ミスが重大な個別指導を招く恐れもあるため、自社のみで抱え込むのは推奨できません。制度を安全かつ最大限に活用し、適法な賃金設計と確実な報告体制を構築するためにも、まずは労務の専門家である「社会保険労務士(社労士)」へ早期に相談し、実務サポートを仰ぐことを強くお勧めいたします。

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※2026年3月5日時点の情報に基づき作成していますが、内容の正確性を完全に保証するものではありません。制度改正の詳細は流動的なため、本情報によって生じた不利益について責任は負いかねます。必ず最新の公文書等と照らし合わせてご確認ください。