【2026年10月義務化】クリニックのカスハラ(ペイハラ)対策ガイド

「受付スタッフが患者様から1時間以上怒鳴られた」「対応に納得がいかないとSNSへの投稿をほのめかされた」——このような患者様やそのご家族からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント/ペイシェントハラスメント)に悩む医療機関が増えています。
2026年10月1日より、労働者を1人でも雇用しているすべての事業主(クリニック・歯科医院・調剤薬局を含む)に対し、カスタマーハラスメント防止措置が法律上義務付けられています。
一般的な企業と異なり、医療機関には「応召義務」が存在するため、「どこまで対応すべきか」の線引きに悩む院長先生も少なくありません。本記事では、医療現場特有の事情を踏まえたカスハラ対策のポイントと、今すぐ取り組むべき具体策を解説します。
1. 2026年10月施行!医療機関に求められる「カスハラ防止措置」とは?
厚労省の指針では、カスハラを以下の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
- 患者やその家族等(顧客等)による言動であること
- 業務の性質等に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
- それによりスタッフの就業環境が害されること
「正当なクレーム」と「カスハラ」の違い
- 正当なクレーム: 「会計の待ち時間が長い」「説明が分かりにくい」など、医療サービスへの不満や改善要求。
- カスハラ: 大声で怒鳴り続ける、土下座の要求、プライバシー侵害、長時間の居座り、SNS等への悪評投稿による脅迫など。
2. 誤解しがちな「応召義務」とカスハラ対応の関係
「医師法第19条の応召義務があるから、どれだけ暴言を吐かれても診察を拒否できないのでは?」と誤解されがちですが、そうではありません。
厚生労働省の通知・指針においても、患者側の著しい迷惑行為や診療を妨害する言動によって医療従事者との信頼関係が著しく損なわれている場合、診療を行わないこと(退去を求めること)は正当化されると整理されています。
重要なのは、「患者を排除する」ことではなく、「スタッフが理不尽な危害や精神的苦痛を受けないための合理的なルール」を組織として持っておくことです。
3. クリニックが今すぐ進めるべき「4つの対策ステップ」
義務化に向けてクリニックが整備すべき具体策は以下の4つです。
①「当院の基本方針」の策定と周知
「当院ではスタッフの安全を守り、良質な医療を提供するため、ハラスメント行為には組織として毅然と対応します」という姿勢を明確にします。院内掲示やホームページに掲載することで、患者様への牽制とスタッフへの安心感に繋がります。
② 報告・相談フローと窓口の設置
受付スタッフが一人で抱え込まないよう、問題発生時の一次報告者(事務長、看護師長等)や相談窓口をあらかじめ定めます。「院長に直接言いづらい」ケースに備え、外部の専門家(社会保険労務士等)を窓口に指定しておくことも有効です。
③ 現場用マニュアルの作成と対応要領の徹底
- 複数対応の原則: 一人で対応させず、必ず他のスタッフが立ち会う。
- 記録と録音: 日時・発言内容を客観的にメモに残す。悪質な電話対応には自動録音等を活用する。
- 退去・警察連携のライン設定: 「○分以上退去に応じない場合は責任者に交代し、不退去の場合は警察へ通報する」などの明確な基準を決めておく。
④ 就業規則の改定と不利益取扱いの禁止
相談したスタッフが不利益を被らない旨を就業規則(または服務規律)に明記します。
4. 対策を怠った際のリスク
カスハラを放置してスタッフがメンタル不調に陥ったり離職した場合、医療機関側が「安全配慮義務違反」として法的責任(損害賠償や労災認定)を問われるリスクがあります。また、悪評による求人難や現場の疲弊など、クリニック経営に甚大な影響を及ぼします。
まとめ:スタッフを守ることが、質の高い医療の提供へ繋がります
カスハラ対策は、患者様を拒絶するためのものではなく、「スタッフが安心して働ける環境を整え、他の多くの患者様へ安心して医療を提供するための守りの仕組み」です。
【2026年10月義務化】医療機関・クリニックのカスハラ対策とは
こちらの動画では、医療現場における暴力やハラスメントへの対応方針や応召義務との兼ね合いについて分かりやすく解説されています。
当事務所のホームページでは「基本方針」策定のための雛型を無料で公開しております。ぜひ、貴院の状況に合わせて労務環境の整備にお役立てください。


